鏡原
本県では、交通死亡事故件数が毎年、全国ワースト上位に位置しており、これまでも浜田知事を先頭に交通死亡事故撲滅のための周知活動やハード整備等が行われてきました。
しかし、令和2年中の交通死亡事故は57件発生し、59人の方が命を落とされています。これは、人口10万人あたりで比較すると全国ワースト1位であり、角度を変えた新たな施策を実施するなど早期の改善が必要であると考えます。
近年の県内の交通事故情勢を調べてみますと、交通事故件数自体は減少しているものの、死亡事故件数は増加している状況であり、その中でも、歩行者が亡くなる事故が平成30年は12人、令和元年は17人、昨年は20人と年々増加しています。また、自転車乗車中の死亡事故も昨年は一昨年と比べると倍増しています。年齢別にみると、過去5年間に高齢者が亡くなった事故は全体の約6割であり、中でも昨年は59人中44人と全体の74.6%にもなっています。
私は、このような交通事故情勢を踏まえると、近年増加傾向にある歩行者や自転車利用者の交通事故抑止対策を強化していく必要があると感じています。
例えば、歩行者や自転車利用者は、「車が止まってくれるだろう」と思い込み、乱横断や信号無視をし、その結果交通事故に遭うといったケースが多くなってきているのではないかと思っています。もちろん、自動車を運転する方はそれも踏まえてハンドルを握る必要がありますが、事故を減らすため、特に死亡事故を減らすためには歩行者や自転車利用者も我が身を守るための回避措置をとることが重要だと考えます。
そもそも、歩行者にしても自転車にしても、信号無視や乱横断等は、本来であれば罰金や科料となる違反行為です。歩行者だから大丈夫、自転車は運転免許証が必要ない乗り物だから大丈夫と思い、法令順守の考え方が薄れているのではないでしょうか。一歩外に出れば、誰もが加害者となり被害者となる可能性があるのが交通事故です。自動車も歩行者も自転車も、それぞれがお互いを思いやり、我が身を自分で守る行動を促していかなければなりません。
これまでの対策は、多くの場合、自動車のドライバーに向けた内容になりがちでしたが、今後は、それに加え、歩行者や自転車利用者への啓発活動や交通安全施策の展開も行っていく必要があると私は考えています。
そこで、その時々によって交通事故の状況は変わっていくものとは思いますが、現下の交通死亡事故の発生状況についての県警察としての分析や、死亡事故ゼロに向けた来年度の交通安全施策、特に歩行者や自転車利用者に対する取組みについて、警察本部長のお考えをお伺いいたします。
県警察本部長
議員御指摘のとおり、昨年の県下の交通事故死者数は、前年よりも大幅に増加し、特に、死者に占める高齢者の割合が、統計開始から初めて7割を超えたほか、歩行者及び自転車乗車中の死者が全体の過半数を占めること、飲酒運転やシートベルト非着用に起因する死亡事故が多いことなどが挙げられます。
このような分析結果からも、議員御指摘のとおり、歩行者、自転車利用者、自動車等運転者それぞれの交通安全意識の向上に向けた取組が必要であると考えております。
県警察では、交通安全教育、交通指導取締り、交通環境の整備を基本としつつ、本年度は、歩行者の半数以上が道路横断中の犠牲であることを踏まえ、横断歩道の安全利用を目的に「横断歩道安全利用促進事業」として歩行者及びドライバー両面からの安全対策を図るなど、交通事故情勢に応じた各種対策を展開してまいりました。
特に、歩行者や自転車利用者の死亡事故の8割以上が高齢者であり、かつ何らかの法令違反があるとの分析結果を踏まえ、来年度は、警察官が高齢の歩行者や自転車利用者に対して声掛けを行い、反射材の直接貼付やヘルメットの着用促進を行う「なんしょんな作戦」をより一層強化するとともに、道路の危険な横断を防止するため、新たに、路面に「わたるな」と表示したシートを貼る「わたるなシート」の整備を考えております。
加えて、歩行者や自転車利用者に対する広報啓発等により、交通事故の原因となる歩行者・自転車による信号無視や自転車の飲酒運転等の根絶に努めてまいります。
県警察といたしましては、引き続き、本県の交通死亡事故の特徴や課題を踏まえた取組の深化を図り、交通死亡事故の抑止に向けた諸対策を強力に推進してまいります。