鏡原
その中で、まず学区制については、11月定例会の文教厚生委員会において、今後、県内の学区の弾力的な運用についての言及が教育委員会からありました。その内容は、令和4年度入学者選抜から定員の5%を上限に他学区から受け入れるというものであります。委員会の中でも、合否の判断が難しくなるのではないか等の意見が出されました。
これまでにもこの学区制については、平成17年に県議会で「県立高等学校通学区域見直しの慎重な取り扱いを求める決議」がなされております。その内容については、「高校間格差の拡大・固定化」、「遠距離通学を強いられる高校生の負担増加」、「諸費用の増加による保護者負担の拡大」、「通学圏拡大によって進路指導や生活指導がより困難になるといった学校負担の増加」などの多くの問題が生じる恐れが強く、「現段階での県立高等学校通学区域の見直しは時期尚早」である、また、「県議会や県民の間での議論を尽くし、一方、現行制度内での高校教育充実に全力を傾けるべきである」とも決議されました。これらの問題がある程度解決された中での今回の提案なのか、私は疑問に感じております。
そこで、これまでにこの学区制についてどのような議論が県議会や県民の間でなされ、決議でもあった問題がどのように解決されたのでしょうか。実施に向けては、より一層議論を深める必要があると考えますが、教育長のお考えをお伺いいたします。
加えて、グローバル化やデジタル化の急速な進展、生徒や保護者の価値観の多様化など、高校教育を取り巻く社会環境は大きく変化しております。大学入試制度の見直し等の動きもあることから、そうした環境変化や教育ニーズの多様化に対応した新たな学びが求められています。また、今回のビジョンの中にも記載がありますが、各高校がこれまで行ってきた特長的な取組みを生かしつつ、時代の変化やニーズに対応して、県立高校一つひとつの魅力を高めていく取組みが重要であると考えます。
そこで、県立高校の魅力づくりや多様化する教育ニーズに対応するため、今後どのような取組みを行っていくお考えか、併せて教育長にお伺いいたします。
次に、東讃地域の県立高校再編に関することについてお伺いいたします。
先般、「3校を育てる会」から2万547筆の署名と共に、「新たな統合校を作る場合は、既存の校舎、運動場等を有効活用する観点からも、キャンパス方式(分校方式)を採用し、志度高校、津田高校、石田高校の現在の場所で、それぞれの専門科をさらに深める教育を行うこと」との要望が知事及び教育長に対して行われたと承知しています。現在、県立高校の魅力化に関する協議会及び東讃統合校に関する懇談会において、統合する高校の教育内容などについて協議を行っております。そのような中で、2万筆を超える署名を添えた今回の要望は、非常に重いものと考えます。
協議会及び懇談会でもこの要望や内容について議論を深めていただきたく思いますが、今回の要望を受けて、どのようにお感じになられたのでしょうか。無視できる話ではないと考えますが、今後の対応についてどのようにお考えなのか、教育長にお伺いいたします。
併せて、先の9月定例会における我が会派の木村議員による代表質問において、東讃地域の高校再編のあり方について知事の御所見をお伺いしたところ、「3校は大きな存在であり、統合にあたって、既存3校をそのまま維持して、活用していくという御提案も一つの考え方であると認識している」との答弁がありましたが、今回の要望も踏まえ、その後のお考えについて改めて知事にお伺いいたします。
知事
東讃地域の県立高校のあり方につきましては、県教育委員会において、平成30年から、「今後の県立高校の在り方に関する協議会」や「東かがわ・さぬき地域の今後の県立高校の在り方に関する懇談会」を開催し、有識者、学校関係者、保護者、地元の企業や自治会の代表者の方々など、関係各方面から御意見を伺うとともに、県議会においても御議論を重ねていただきました。
昨年2月の県議会定例会において、「石田高校、志度高校、津田高校は、これまでの伝統と地域を支える人物を数多く輩出してきた特色ある教育を生かし、これをさらに発展させるために統合し、新たな高校を設置する」という東讃地域の再編整備を盛り込んだ「魅力あふれる県立高校推進ビジョン」を御議決いただいたところであります。
同窓会の皆様方や地元の方々にとって、3校が大きな存在であることは承知しており、今回のキャンパス方式を求める署名についても、大変重いものと感じております。こうしたことを受け、県教育委員会においては、再度、全国の複数の学科を併設して統合した高校の事例や、キャンパス方式の高校の事例について検討を行うとともに、「東讃統合校に関する懇談会」や「県立高校の魅力化に関する協議会」において、キャンパス方式を含めて、改めて御意見を伺ったところ、東讃地域の新しい統合校を魅力あるものにするためには、一つの場所で、一定規模の学校とすることが必要であるという御意見が多くを占めたと聞いております。
この間、私も3校を育てる会の皆様方から直接、御意見を伺う機会をいただきましたが、私といたしましては、多様な価値観を持つ生徒たちが切磋琢磨できる教育環境、部活動や学校行事を含む生徒の多様な学びのニーズに応えられる教育環境を整備するといった観点、また、地域活力の向上といった観点からも、一つの場所で、一定の規模を持つ学校づくりを推進していくこと、その準備を今から進めていくことには意義があると考えております。 このため、今後、県教育委員会において、生徒たちにとって魅力ある、また、地域のシンボルともなるような新しい統合校について、その教育内容や地域連携等に関し、地域や関係の皆様方に丁寧に御説明し、御理解を賜っていくべきものと考えております。
教育長
学区制につきましては、平成17年、議員御指摘の決議が、県議会においてなされたことは承知しております。県教育委員会では、その後、受検機会の拡大を図るための自己推薦選抜の導入、多度津高校造船コースなど5つの高校での新たな学科の設置、普通科における坂出高校教育創造コースの設置など、特色ある学びの推進、定時制における秋募集の実施など高校教育の充実を図ってまいりました。学区の弾力的な運用は、学区制を廃止するものではなく、現在の2学区制を維持しながら、定員の5%程度を上限に、学区を越えた受検を可能にするものとして、ビジョンに盛り込み、県議会においても御議論をいただいたものであります。
現在、専門学科や総合学科につきましては、全県一区となっており、多くの生徒が学区を越えて進学しております。普通科におきましては、これまでと大きく状況が異なってきており、観音寺第一高校スーパーサイエンスハイスクール事業、高松北高校グローカル事業など、各校で特色ある学びを進めてきております。また、国における普通科再編の動きもあり、普通科においても、今後ますます、そこでしかできない学びを提供していく時代になってまいります。生徒の中には、こうした特色ある普通科高校の学びに対するニーズもあることから、希望する高校に進学できるよう、制度的に一定の措置を講ずる必要があると考えております。入学試験において、定員の5パーセント程度をどのように設定するかなど、具体的な実施方法や選考の枠組みにつきましては、県議会の御議論もいただきながら、検討してまいります。
県立高校の魅力づくり等につきましては、新年度から新たに、魅力あふれる県立高校推進事業を開始し、高校教育で求められる、郷土への理解や郷土愛、イノベーション創出力、グローバル社会への対応について、リーディングスクールを指定し、教育プログラムの研究開発を行うとともに、県教育委員会主催のワークショップや発表会を通じて、研究成果を普及し、県立高校の一層の魅力向上につなげていきたいと考えております。
東讃地域の再編整備につきましては、県教育委員会といたしましても、2万547筆という署名は大変重いものと受けとめており、新しい統合校のイメージを地域の方々に伝えきれていないのではないかと感じております。このことにつきましては、3校を一つの場所に統合してできる新しい高校において、どのような教育が行われ、どのような学校になるのか、3校の伝統や地域とのつながりがどのように引き継がれるのかなど、統合校の魅力について、今後も引き続き、様々な機会を通じて、地域や関係の皆様方に、丁寧に御説明をしてまいりたいと考えております。